悪魔のようなあいつ(1975)
「どういう動機だ!銭か?金か!?」
「怒りだよ、よくわけのわからない怒りってやつだよ・・・」
バー「日蝕」でギターの弾き語りとコールボーイ(淫売)で生計を立てる可門良(沢田研二)。彼は時効が半年後に迫った三億円事件の犯人であると同時にブリオブラストーマという脳腫瘍に罹り余命いくばくもなかった。その金を狙う良の孤児院の先輩で元刑事の野々村(藤竜也;ハードゲイ)、かつて良が住み込みで働いていたバイク修理工場の経営者・八村(荒木一郎)たち。八村の嫁(大楠道代)、足の不自由な妹、妹の看護婦(篠ひろ子)たちは良の魅力の虜となる。そして、真犯人逮捕に執念を燃やす老獪な白戸警部(若山富三郎;勝新太郎の兄)。良を取り巻くすべてが破滅へ向かっていく。
当時の時代をときめき主題歌も歌うジュリーとテレビドラマの巨匠・久世光彦、脚本は『太陽を盗んだ男』の監督の長谷川和彦。阿久悠原作の連載漫画がドラマに追いつきコメディタッチな前半に比べ後半は長谷川色が濃くなっている。実際の事件の時効に合わせて同時並行に放映されてていたらしい。映像特典で長谷川が「テレビドラマとしての表現の制約に苦労した」と語るように結果的に『太陽を盗んだ男』の橋頭堡になったといえる作品。
退廃感や出口のない閉塞感の中で鬱屈した気分が共有され始めた70年代らしい何かがいい。まだ沢田のバックバンドのベーシストだった岸部一徳が役者デビューしており個人的にはその関西弁のチンピラ役と白戸刑事が好きだ。
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