太陽を盗んだ男(1979)

中学の物理教師・城戸誠(沢田研二)が東海村原子力発電所からプルトニウム239を盗み出し原爆を作る。完成しラジオから流れるボブ・マーリーにジュリーが踊る。作ってみたものの目的がなかった。そこでまずは「巨人戦ナイター中継の延長」、次に「ローリング・ストーンズ来日公演」を要求する。沢田研二のシニカルさとラジオDJ池上季実子の軽やかさ、刑事・菅原文太の実直さの演技、色気が素晴らしい。

原爆の時限装置をセットした主人公が刑事と対峙しながら「この街はもうとっくに死んでいる、死んでしまっているものを殺して何の罪になるというんだ」というセリフに潜む政治性のなさが最強の政治性だ。(アナーキズムに政治性があるかは置いといて)

スライドショーのようなコマ送り(ストップ・モーション)を使う淡々とした演出もいい。アメリカン・ニューシネマ、フランスのヌーヴェルヴァーグの日本版といったところでしょうか。
80年代の社会の軽薄さ・無気力、90年代以降の大量破壊・テロルの時代とそれに対応する難しさ、匿名社会の中で「somebody」たらんとする大衆の心理などを予言しているとも解釈できる79年の作品。
ちなみに原案・脚本を考えたレナード・シュレーダー(『タクシー・ドライバー』の監督の実弟)はうちの大学で英文学の講師をしていたらしいです。

サントラも買ってしまいました。

太陽を盗んだ男 ULTIMATE PREMIUM EDITION [DVD]

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太陽を盗んだ男 ― オリジナル・サウンドトラック

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