ウェブ進化論(2006)

IT革命がもたらした「チープ革命」と技術革新によってネット社会だけでなく、リアル社会にまで地殻変動が起こっていることを、シリコンバレーならではのオポチュニズムとアンチ・エスタブリッシュメントの視点でウェブ社会について論じられている。ブログ・ロングテールWeb2.0ウィキペディアなどを表面的な変化だけでなく「革命」と捉え、既得権益があるリアル社会に明らかに影響があるというのである。特に、ヤフー(人間の介在認める)/マイクロソフトドロップアウト者の起業)/Google(テクノロジー志向・医学博士などのベスト・アンド・ブライテストの起業)の比較やGoogleがただの検索エンジンにとどまらず「知の世界の再編成」であるというのは興味深かった。Google的なものが日本ではなくシリコンバレーから生まれるひとつの要因には、大げさに言えば”個人の可能性の信じ方”の違いといった思想的な背景があると感じた。ただ、現実には課題がないわけではないとおもう。ワン・クリックがあらゆる人に平等という意味でGoogleが民主的であるというが、現時点で人気のあるサイトが結果的に検索結果の上位に表示されるわけであるし、世界中の著作物をスキャンしネット上から検索可能にするという試みには、著作権の本来の目的である著作者のくいぶちをどうするのかといった点で、ハードルが高いと思う。また、個人の趣向から商品を薦めてくるマイノリティ・リポート的なアマゾンと人間性についてさまざまな問題をはらんでいるかもしれない。

・追記
本書では言及されていないが、Last.fmLast.tvについての動向も注目してみたいです。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

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