メルシィ!人生(2000)
ゴム製造会社の経理マン・フランソワ・ピニョン(ダニエル・オートゥイユ)は優秀で仕事振りはまじめだが平凡で退屈な男だと社内で噂され疎まれていた。そのうえ、奥さんと息子からも軽蔑され見捨てられる。追い討ちをかけるように会社までクビになってしまうのだ。家のバルコニーから身を投げようとしているところを隣の部屋に住む老人(ミシェル・オーモン)から諌められ思いとどまる。老人はクビを防ぐ秘策を教えてくれる。その秘策というのはストレートであるにもかかわらず「ゲイ」であることをカミングアウトしろ、ということ。つまり、「ゲイ」であることを理由にクビにされたことと主張すれば、会社の社会的評価が下がるはず(ゴム工場の売り上げはコンドームが多く、ゲイの人たちも重要なお客さん)なのでクビはつながるだろうという目論見である。というのも、この老人が20年前にクビをつなぐためと同様の理由でクビにされており、その復讐なのだ。しかし、カミングアウト後のピニョンには様々な困難が降りかかってしまうのだ。同時に「退屈な男」から「困った男」へ変貌する。
この映画はれっきとしたコメディである。しかしながら、同性愛をテーマ(人種問題も含めて)とした社会派映画とも捉えられるだろう。私たちが持ってしまいがちな同性愛者への差別の眼差しをコメディのストーリーに乗せて描くことで、逆説的に真摯な態度が求められると感じた。これこそがフランスのコメディなのでしょうか。
ゲイとカミングアウトしたあとに、元嫁は嫌悪を示し、17歳の息子との関係が好転する。ジェネレーションによって認識が異なるということをおもしろく描いていると思いました。
原題は「LE PLACARD」で戸棚という意味らしいのですが、映画の中ではカムアウトすることを「戸棚から出ろ」というふうに言っていた。
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